近年、日本の城跡で様々なアプリが利用され始めています。
見どころがわかりやすく解説され城跡を楽しむことができるだけでなく、AR・ VR技術などを活用し城を復元する際に出てくる問題点を解決するサービスとして、注目をされています。
今回はその中から、筆者が実際に体験した城跡のアプリや注目しているARを紹介します。
城跡巡りAR・VRなどのアプリサービスを3つご紹介
江戸城:門や櫓の説明するアプリ
現在、江戸城の一部は自由に見学することができます。管轄は宮内庁で、江戸城に入る際に手荷物検査が必要ですが、予約などは不要。もちろん無料です。
入り口から入ると石垣や門、櫓などの設備を見ることができます。当時の技術の粋を集めただけあって、石垣の高さや勾配は見るべきものがあります。
さらに門の大きさや頑丈さ、櫓に設けられた狭間の位置などは、単なる飾りではなく、攻められた時の防御拠点としての威圧感があります。
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そんな江戸城を楽しむために「宮内庁参観音声ガイドアプリ」があります。城のことを知らない来場者にも楽しめるような説明があります。
また、櫓などは高くて詳細を目視することができませんが、アプリを利用するとそんな詳細まで確認することができます。
個人的には、富士見櫓の破風のところにあった青海波の文様がおすすめです。
こちらはアプリに説明があって見つけたのですが(要確認)、防御拠点としての威圧的な櫓に、なんとも言えない風雅さを感じました。
また、予約が必要な皇居一般参観というのがあります。現在、人数を減らして実施中で、事前予約だけでなく、当日受付枠もあります。
皇居一般参観は、午前、午後に一回ずつ、ツアーを組んで、皇居の中を見ることができます。通常では入れないところを通るので、伏見櫓や蓮池掘などを見ることができます。
佐倉城:昔の姿を見ることができるアプリ
千葉県の佐倉にある佐倉城址も、縄張が整備されている城跡です。建物の復元はないですが、残っている土の盛り上がり方などから、どこに門や櫓があったのかが分かりやすく整備されています。
本丸を区切る空堀は、深く、急斜面で、他ではなかなか見られない形で残っているので壮観です。石垣が使われているわけではないので、当時に比べると埋もれてしまってはいますが、それでも一見の価値はあります。
建物が残っているわけではなく、復元もほとんどされていない佐倉城は、良い面も悪い面も両方持っています。
悪い面は、残されている土の盛り方といった遺構から、当時の城の姿を想像することしかできないという点です。
これは、ある程度、城の知識がないとできないことなので、知らない人にとっては、佐倉城に行っても単なる山登りと山頂付近の公園で遊ぶだけになってしまいます。
良い面は、下手に復元されていないので、遺構が改悪されていないという点です。歴史好きにとっては、建物はなくても、遺構がしっかり残っている方が好きなのです。
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佐倉城では、このマイナス面をカバーするのにアプリを活用しています。
施設があったところでアプリを立ち上げると、当時の写真や絵図面などを見ながら、説明を見ることができます。当時の佐倉城の姿を、アプリを通して想像することが簡単にできます。
村上城:AR・VR技術へと進化したアプリ
村上城では、個人の方が、VRでの復元に挑戦しています「ビジュアル再現 村上城」(https://vr-murakamicastle.jp)。これは、個人の方が作成されているのですが、非常に注目に値します。
村上城自体は、石垣が残っていますが、櫓や天守などの建物はありません。門や櫓の跡に看板が建てられているだけです。
遺構としては、非常に良好な形が残っているので、知識があれば戦国から江戸初期の城の姿を彷彿とさせます。
しかし、こういった遺構の上に建物を復元するとなると、問題も多くあります。それを解決するのがAR・VR技術と言ってよいでしょう。
城の復元の問題点
AR・VRの現場を紹介する前に、復元の問題点について説明します。
城の復元で問題になるのは、どの時代の建物で復元するのか、建物が資料に基づいているのかという点です。さらに、建設、維持・保守にかかる費用なども発生します。
また、観光施設として考えた場合、城の天守を復元する際に、エレベーターを設置する、しないで揉めたりします。一度建ててしまうと変更することも難しいです。
一例として、江戸城の天守を再建する動きを紹介します。
現在、千代田区にある江戸城は、徳川家が整備をしたもので、過去に天守が3回建てられています。全て位置も大きさも異なります。
そして、3度目の天守が火災で焼けたあとに、4度目の天守予定地に天守台という天守の土台となる石垣が作られたところで、天守再建の動きが止まります。
現在の天守再建は、この4度目の天守台に、3度目の天守の縮尺を合わせて建てるというものです。3度目の天守については、設計図などの図面が残っているということが大きな理由のようです。
しかし、3度目の天守があった場所と現在の天守台の位置は異なるので、あらぬ方向に鉄砲や弓を撃つ「狭間」が配置されることになることになり、防御拠点としての天守の存在意義というのは無視されてしまいます。
そのため、再建ではなく文化財の破壊という考えをする人もいるようです。
観光施設と考えるのか、歴史的な建造物としての意義を尊重するのか。
考える立場が異なるので、どちらが正しいというものではないと思いますが、このように城の復元は問題が出てきてしまいやすくなります。
AR・VR技術が実現する城の未来
復元の問題を知っていただいた上で、村上城のVRを見ていきましょう。
Webページからは、天守など部分部分がVRで確認でき、Windowsでは忍者になって寛文の頃(1663-1667年。大改修が行われ、天守が落雷で消失する前まで)の村上城の内部を探検できるようになっています。
また、VR共有プラットフォーム「comony」では、城の中を自由に動き回ることができます。comonyは、WindowでもMacでもどちらでも村上城を楽しむことができます。(https://comony.net/spaces/312)
現地に行った後に、VRの再現を歩いて見ると、より当時の防御拠点としての城を感じることができるはずです。
ただ、VRを作成している方がWebページで説明していますが、残っている資料が足りないため、「学術的に正確な復元」は難しいということです。そういう意味では厳密に再現したものではありません。
こういったAR・VRが良いのは、修正が可能だということです。
建物を復元した場合、その後に解釈の違いなどから変更をしようと思っても、難しいです。それがAR・VRでは、修正できます。
村上城のVRでも、新しい資料の発見などによって、補正を加えているとしています。
城跡は歴史的価値がありつつも、観光スポットとしての価値もあります。その両立は非常に難しいところがあります。
城好きにとっては、登りにくいままの状況の方が、当時、甲冑を身につけて攻め込んだ状況を想像しやすくなります。
一方、観光的には登りやすいように階段をつけたり手すりをつけたりした方が良いでしょう。この正解はないと思います。
そんな二律背反の城跡活用にAR・VRが解決してくれるのではないかと思っています。
今後、城跡でアプリ技術が進んでいくことを期待しています。
まとめ
・アプリで、城跡巡りはもっと楽しくなる。
・復元にかかわる問題も解決できると期待。
・「ビジュアル再現 村上城」は是非体験していただきたい。