昨年(2020年)12月に日本で初めて治療用アプリが保険適用になり、発売されました。
これは非常に画期的なことで、薬や手術だけでなく、アプリを利用したデジタル療法の効果が医学的に認められたことになります。
薬による治療ではプラセボ効果というものがあります。効果のない薬を飲んでいても、本人が効果あると思い込むことで、症状が和らぐ(和らいだように思う)ことがあります。
アプリを利用した効果も、このようなプラセボ効果があると考えられ、今回のアプリでは、これを排除するような形で臨床試験が行われました。
ただし、注意も必要です。
アプリを検索すると、様々な症状の改善などをうたうアプリは多くあるのですが、保険適用になったのは、今回紹介する禁煙アプリ「Cure App SC」のみです。
「Cure App SC」と禁煙治療の組み合わせで効果
Cure App SCは、お医者さんの診断により、アプリを使用することになります。
実際には、12週間、計5回の診療と薬に加えて、アプリが処方されます。アプリのみを利用することはできません。アプリは、お医者さんから処方される医療機器という形になります。
アプリは「患者アプリ」「医師アプリ」「COチェッカー」の3つから成り立っています。
患者アプリは、禁煙をしたい患者さんが日々の状況を入力していき、治療の状況に合わせたメッセージや動画などのガイダンスが適時提供されます。
吸いたいという気持ちを紛らわす動画やメッセージなども出るそうです。COチェッカーの数値も自動で同期されます。
アプリなので、スマートフォンを通して常時、情報を入力、ガイダンスが提供されるのがポイントです。
従来の方法では、治療をしていても、自宅や仕事場などお医者さんの目が離れた場所で煙草を吸いたくなってしまう時の対応が難しいというのが問題でした。
アプリから常時情報を提供されることで、吸いたくなった時に気を紛らわすことができ、この問題を解決してくれます。
また、お医者さんは「医師アプリ」を通して、患者さんの日々の状況を確認することができます。
今までは診察の時の問診でしか情報が得られなかったのが、より多くの情報から診断をすることができ、より的確な診察をすることができるようになります。
このように「Cure App SC」は、患者さんが診察と診察の間の空白期間をサポートし、お医者さん側にもより詳細な患者さんの情報が入ることで、禁煙の効果を高めるものとなっています。
「Cure App SC」の成果
実際の成果については、「Cure App SC」の会見の記事を見てみましょう。
現在の標準の禁煙治療の場合、12週経過した時点の完全禁煙継続率は、54.1%ということです。これが標準の禁煙治療+Cure App SCを使った場合は83.7%と29.6ポイント高い結果となっています。
また、24週で同じく比較すると、標準治療が40.8%、標準治療+Cure App SCは、67.9%と、27.1ポイント高くなっています。「Cure App SC」を使うことで、禁煙の継続効果が見られるのがわかります。
「Cure App SC」を開発しているCureApp社は、がん患者さんを支援するアプリを製薬会社の第一三共と開発中でもあります。また、別の会社は認知症に関するアプリを開発しています。
今後、薬や手術といった治療法に、あらたにアプリなどを利用したデジタル療法が加わることになるでしょう。
まとめ
・治療アプリが初めて保険適用に。デジタル療法が新たな治療法として期待。
・お医者さんの診察から、次の診察までの空白期間を補完。
・12週経過の完全禁煙継続率はプラス29.6ポイント