こんにちは。i-o-times編集部のYです。
前回に引き続き、ぬぐるみケースZOOPYの開発ストーリーについて、生みの親であるシマシマ株式会社 代表取締役大河内氏へのインタビューをお伝えします。
意外にもZOOPYは、発売してすぐにヒットという訳ではなかったようです。ZOOPYが思うように売れない原因は、スマホアクセサリー業界の課題にあったようです。
ぬいぐるみをどうやってスマホにつける?
i-o-times編集部(以下バルーン):モノづくりのプロからのアドバイスで、フィギュアケースからぬいぐるみケースへの変更となったわけですが、製品化するまでに大きな壁はあったのでしょうか。
シマシマ 大川内氏(以下、大川内氏):そうですね。ぬいぐるみケースと決まってからも、色々と試行錯誤の連続でした。
難しい課題だったのが、どうやったらぬいぐるみをスマホにしっかり固定できるかでした。
ZOOPYは、ぬいぐるみ部分と固定パーツ部分の二つからできています。動物の手足にもなる固定パーツの形状が最初の問題となりました。
工場の方からは、スマホに固定する部分は2~3cmの幅がないと、しっかりとスマホにぬいぐるみを固定できないと言われてしまいます。しかし、そうするとぬいぐるみの手足がドラえもんくらい大きくなってしまいます。
アドバイスを元に実際に試作してみたのですが、「う〜ん。」という感じです。
バルーン: それぜひ見たかったです(笑
プロに頼らず自分でも試作
大川内氏: プロに任せっぱなしではいけないと思い、自分でもいろいろと試してみることにしました。
買ってきたプラスチック板に、いろいろな大きさの穴を開けて、iPhoneの角を何cmくらいの幅で固定すれば安定するか試してみました。
何度も試すうちに、スマホが安定して固定化できる幅がわかってきて、工場の方に試作パーツを作ってもらいながら、だんだんと動物の手足となるくらいまでの細さの固定パーツができあがりました。
バルーン: 私も最初にZOOPYを見たとき、すぐスマホが外れそうだなと思いました、でも意外とスマホにしっかりと固定されるのに驚いたのを覚えています。大川内さんの試行錯誤の結果だったのですね。
大川内氏: 安定して固定化できるまでのハードルは、それでだけではありません。
次に問題となったのが、固定パーツをどうやってぬいぐるみの中に入れるかです。
こだわりが大きい分まだまだ日々改良中
バルーン: 固定パーツを組み込んで、ぬいぐるみを縫い上げるのではないのですか?
大川内氏: いいえ。固定パーツの大きさから、ぬいぐるみにパーツを組み込んだ状態で縫い上げることはできません。固定パーツを通す穴以外は、縫い上げる必要があります。
しかし、固定パーツを通す穴が目立つ場所にあっては、せっかくのかわいいぬいぐるみが台無しです。
企業秘密なので、細かいところは話せませんが、固定パーツを通す穴をどこにすれば縫製跡が目立たないか、そのための固定パーツの形状をどうすればよいか、など設計にかなり苦労しました。
ここが一番苦労した課題かもしれません。
バルーン: 確かにZOOPYを見ても、どこから固定パーツを通したのかわかりません!素人にはわかりにくいところですが、消費者目線に立ったこだわりですね!
大川内氏: 実は、この課題は現在も続いています。固定パーツの形状上、一部分に負荷がかかりるので、出荷後に固定パーツが破損してしまうことがあるんです。
まだまだ日々改良中です。
ぬいぐるみケースは展示会でデビュー!
バルーン: 試行錯誤の上、ようやくぬいぐるみケースが生まれたわけですが、最初はどうやって売り出したのでしょうか?
大川内氏: スマホケースのような"モノ"を本格的に売るのは初めてでしたので、お客様がいないのはもちろん、卸していただける業者さんも知りません。
そこで羊のぬいぐるみケース、今でいうSHEEPYですね、この試作品ができた段階で展示会に出してみました。たったの3アイテムしかありませんでしたが(笑)
まさに一品勝負のつもりで、お客さんの反応を見て本格的に売り出すか決めようと。
バルーン: 私も展示会によく行きますが、商品が3つしかないブースは見たことありません。
大川内氏: だと思います。ブースに来ていただいた多くの方から「商品これだけですか?」と言われましたが、商品への関心度は上々でした。そこで、商品化をすることに決定しました。
しかし、商品化したものはいいものの、なかなか取り扱ってくれるところが見つからず1〜2年は苦労しましたね、業界の商習慣を全く知らない素人でしたので。やはり"流通にのせる"というのに苦労しました。
喫茶店での熱い議論が注目を集める?!
バルーン: 1〜2年も売れなかったとは意外です。そこまで続けられたのは、やはり手応えがあったからでしょうか。
大川内氏: そうですね。商品への手応えは持っていました。
SHEEPYだけだとアイテム数が少な過ぎるということで、ZOOPYシリーズの開発を進めていたときです。喫茶店で打ち合わせをよくやっていたのですが、周りにいる全然知らない人たちがテーブルに置いているZOOPYに喰いつくんです!
「これ何ですか?!」「どこで売ってるんですか?!」という感じで。
バルーン: リアルなユーザーの反応で励みになりますね。
大川内氏: はい。ただ今思えば、大の男の大人が、ぬいぐるみのサンプルを持って熱い議論を交わしていたのが、周りから見たら滑稽だったのかもしれません(笑
バルーン: たしかに。何の商品なのか気になりますね(笑
市場の声が届かない!!
大川内氏: 業界の素人でしたので、他にもいろいろ苦労しました。例えば、商品パッケージについてもです。
前述のように、商品に手応えはあったので、店頭に並べば売れる自信はありました。しかし、なぜか比較的大きいある小売店では、あまり売れずに取引が終わってしまったことがあります。
問屋さんに聞いても理由はわかりませんでした。
しばらく経って原因がわかったのですが、商品パッケージが大きすぎてスマホケース売場の棚に並べることができず、目立たないところに置かれていたようなのです。
大手小売り点では、棚に陳列できるパッケージのサイズに規格があるらしく、それから外れる商品は店舗の隅に置かれることもあるらしいのです。
バルーン: そうなんですね。そのとき売場の声が届けば、すぐに改善できたかもしれませんね。
まとめ
ZOOPYのように商品力がある商品でも、パッケージの大きさが原因で売れないという盲点もあったようです。
ZOOPYがヒットするまでに苦労したこととして"流通"を大川内氏は挙げていましたが、小売店にある市場の声が、メーカーにまで"流通"していないスマホアクセサリー業界の課題も見えてきました。
さて、ぬいぐるみケースZOOPYの生みの親・シマシマ株式会社の大川内氏に伺ったお話を3回にわたってお伝えしました。
数々の困難を克服しながら、ぬいぐるみスマホケースという新しい商品を世の中に送り出してきました。
「もっと皆さんに喜んでもらえるような魅力的などんどん開発してきたいですね。」(大川内氏)
新商品である「ZOOPY専用ストラップ」を首からぶら下げ、最後まで熱く語っていただきました。これからのZOOPYの進化にも注目です。