こんにちは。i-o-times編集部のYです。
「赤外線サーモグラフィ」という単語を聞いたことはあるでしょうか。そうです。たまにテレビの番組や、空港の国際線の到着出口などで見かけるアレです。
数年前に、SARSという感染症が世界的に流行した時に、よくテレビで取り上げられていました。
今回紹介するスマホガジェットは、スマホを赤外線サーモグラフィーに変えてしまう、その名はFLIR ONEです。スマホに取り付けるだけで、「見えないものが見えるようになる」夢のようなガジェットをご紹介します。
FLIR ONEとは
FLIR ONEは、スマホ専用につくられた赤外線サーモグラフィガジェット。FLIR ONEをiPhoneやAndoroidのコネクタに接続するだけで、手持ちのスマホが赤外線カメラに早変わりします。
FLIR ONEを製造しているメーカーは「FLIR Systems Inc.」というアメリカの会社(以下、FLIR社)。赤外線カメラ・航空機放送用カメラ・機械視覚システムなどの画像システムのトップメーカーであり、世界60か国以上にわたってFLIRの製品は使用されています。その用途は、工業用はもちろん、商業や行政、さらには軍事用途にまで多岐に渡ります。
◯Your Vision
◯Thermal Vision
世界的な暗視装置メーカーであるFLIR社の製品は高価なものであり、導入モデルでも従来は100,000円を超え、個人が使うにはなかなか手のでないものでした。
FLIR ONEが登場したのは2014年。個人でも気軽に使える本格的なサーモグラフィということで、発売当初から大きな話題に。
初期に発売されたFLIR ONEはiPhoneケースと一体になっており、Andoroid機種に使用できないだけでなく、新しいiPhoneにも対応できませんでした。
現行のFLIR ONEは、スマホのコネクタに接続する方式を採用しています。iPhone・Androidにかかわず、さらに手軽に使用できるようになりました。
FLIR ONEの原理
FLIR ONEには二つのカメラが備わっています。一つは、私たちの目で見える「可視光」を捉えるカメラ。そして、もう一つが「赤外線」を捉えるカメラです。
赤外線は人間の眼では見ることのできない光(赤外線スペクトル)です。赤外線スペクトルは、可視光よりも長い波長を持っています。そのため、波長の短い電波や紫外線のように、裸眼だと見えることはありません。
電磁波(光)のスペクトル図(出典:ウシオ電機)
また、赤外線スペクトルは熱エネルギーとほぼ同じであり、物体の表面が持つ温度に比例して、その強度も強くなります。つまり、物体の表面から発せられている赤外線を画像化することで、光がない状況でも物体(熱)を“見る”ことができるようになるのです。
FLIR ONEは、軍事用にも使われる特殊なセンサを使って、物体の表面から発する熱エネルギーをカラー画像に変換します。前述のように、物体表面の熱エネルギー(温度)と赤外線強度は比例しますので、暗闇の中で物体が見えるだけでなく、物体の温度差までも観察することもできます。
尚、FLIR ONEを通して見える映像は、「透視」とは違います。衣類を透視することはもちろん、壁やガラスの向こうにあるものや、地中に埋まっている物体を検知したりすることはできません。
実機を試してみた
FLIR ONEの装着
iPhone用のFLIR ONEをお借りしましたので、早速試してみました。
本体は非常にコンパクトかつ重さも36gと軽量です。本体につけても、重量が増したような感覚はほとんどありません。
FLIR ONEの装着で注意が必要なのは、本体ケースとの相性です。筆者はバンパーケースをiPhoneにつけていますが、FLIR ONEのコネクタが短く、バンパーケースをつけたままだと使用することができませんでした。
FLIR ONEのコネクタの長さは、スマホケースの厚み分の寸法は考慮されていないようなので、スマホケースを外すか、延長のLightningケーブルが必要となります。
専用アプリが必要
FLIR ONEを使用するには専用のアプリをダウンロードする必要があります。アプリはApp Store(iOS)もしくはGoogle Play(Android)より無料でダウンロードできます。
海外メーカー製のFLIR ONEですが、アプリは日本語に最適化されていますので安心。マニュアルも必要なく誰でも簡単に使いこなすことができます。
バッテリーの持ちは良くない
FLIR ONEはセルフバッテリーで動作しますので、iPhoneのバッテリーを消費するようなことはありません。しかし、逆に言うとFLIR ONE本体の電源がなくなると使用できなくなります。
バッテリーの稼働時間は公称1時間となっていますが、感覚的には30~40分くらいで電源が切れてしまいます。バッテリーのフル充電までの時間も30分くらいと短いことから、大きなバッテリーは積んでいないことが推測されます。本体の軽量・コンパクトさと引き換えにバッテリーを犠牲にしているのかもしれません。
尚、FLIR ONEへの充電は、microUSBケーブルを使用します。iPhoneユーザーからすると、バッテリの持ちが良くないFLIR ONEを出先で使う場合は、余分なケーブルが必要となります。
いろいろ撮影してみました
FLIR ONEを通してみる熱画像は、可視光カメラと赤外線サーモグラフィーを重ね合わせた画像です。そのため、被写体のどの部分が熱を持っているかがはっきりとわかります。
パソコン
内臓バッテリーがあるキーボード中央部が発熱しています。
モバイルルーター
カイロのように熱くなる筆者のモバイルルーターは45℃近くまで発熱していました。
ガス給湯器
稼働中の給湯器は、お湯の配管と、排熱吹き出し口が高温になっています。わかりにくいですが、排気と壁に反射した配管の熱エネルギーもFLIR ONEは捉えています。
尚、FLIR ONEが測定できる温度は-20°C~120°Cの範囲です。
ガラケーの赤外線通信
ガラケーには赤外線通信機能がありました。FLIR ONEで赤外線通信を可視化できないか試してみました。
ガラケー先端の黒い部分が1秒間隔くらいで点滅していました。キャプチャだと分かりづらいので、動画も撮影してみました。
FLIR ONEは静止画像だけでなく、動画も撮れるのです。
ラーメン屋の店内
行きつけのラーメン屋店内を撮影させていただきました。茹でたての熱々麺が、つけ麺用の冷々麺に変わっていく様子がわかります。
※動画を再生すると音が出ます。
まとめ
プロが使用する高価な機器顔負けの赤外線サーモグラフィーが気軽に使えるFLIR ONEは魅力的な商品ではないでしょうか。
ちなみにメーカーが提案するFLIR ONEの家庭での使い方は以下です。
-
自動車のメンテナンス
- 冷却や排気システムのチェック
- ラジエーターの液漏れを特定
- タイヤの状況や空気圧を確認
-
住居の省エネ化
- エネルギー効率
- 住宅の断熱材や窓で、熱が漏れている場所を発見
- エネルギー効率の良くない電化製品を特定
- 冷たい隙間風を特定
-
自宅のメンテナンス
- 水漏れ箇所を特定
- 水漏れや浸水の原因を追跡
- ショート箇所を発見
- 輻射床暖房のコイルを特定
- 壁内や屋根裏の昆虫・ネズミを発見
FLIR ONEが写す画像は、基本的に物体の「表面温度」です。そのため、手の届く範囲であれば人の手で触れば事足りることでもあります。
しかし、温度を調べたい箇所が手の届かない・触れない場所であったり、複数ある場合には、簡便にかつ網羅的に温度測定ができるツールとしてFLIR ONEは役に立つといえるでしょう。